コラムcolumn

2020.5.26印泥について

 印泥とは、書画作品の仕上げ「落款」を押す際に使う、特殊なインクのことです。

よもぎを乾燥させた「もぐさ」と、鮮やかな朱を維持するための水銀朱(他に朱砂・辰砂・

丹砂ともいいます)、木ロウや松ヤニ等を、中国伝来の特殊な製法で精製した油(ひまし油等

が入っているそうですが、詳しくは企業機密になるので分からないようです)で練りこんだ

ペースト状の商品となっています。そのため、気温の変化や湿気・乾燥に弱い特性を持って

います。

 

 夏季によく見られる症状・・・溶けて柔らかくなりすぎる場合があります。冷蔵庫にしば
               らく入れて冷やしますと、元に戻ります。戻らない時は印
               泥の寿命だと考えて下さい。買い替えをお勧めします。

 冬季によく見られる症状・・・低温のため固まり使えなくなる場合があります。ドライヤ
               -を印泥が入っている印合の裏に吹きかけ、十分に温めた
               あと、よく練ることにより元に戻ります。

               戻らない場合は、別売りの印泥油を少しずつ混ぜ合わせ

               練ってお使い下さい。
               それでも戻らない場合は、寿命だと考えて下さい。

 

***印泥の疑問、アレコレ***

●陶器製の印合が多いのはなぜ?
 印泥に含まれる油分が蒸発しやすいためです。印泥を容器に入れて保管する際、この蒸発
を防ぐために、容器の上から木箱に入れて保管することをお勧めしています。ですが、陶器
・石器は油の蒸発に特に強いため、印合が陶器・石器製であれば、これに入れておくだけで
木箱に入れた時とほぼ同じ効果があるのです。これ以外の容器に入れる場合は、蒸発防止の
加工をしてあるかどうか、確認してから購入することをお勧めします。弊社では、輸入のア
ンティーク商品等があり、加工済みかはっきりと確認出来ない商品が多いため、出来るだけ
陶器製のものをお勧めしています。

●価格の違いはなぜ?
 色味の違いや、原料・製法の違い等もありますが、水銀朱によるところが大きいようです。
これは、水銀と硫黄を焼しめて作られますが、これが純粋(天然)に近いものほど重く、時間
経過等による変色が少ないことから、価格が高くなっております。

 印泥は使わずに放置しておきますと、印泥中の油分と水銀朱が分離し、どちらかの成分が
底に沈んだり、表面に浮かんで来たりします。その状態でご使用頂きますと、落款を押した
際に、作品(紙)の裏側に油が染み出してしまうことがあります。お使い頂く前にはもちろん
のこと、普段からこまめに練って頂くことによって、長持ちいたします。

 text= 西本皆文堂
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